「トロン―国産OSが世界標準になる」とかいう見出しの記事について

結論

いつものアレなのになんで今回はこう騒ぎになってるの?

事実関係

2017年11月のニュースとして、μT-Kernel(従来のμITRONにおける小さめのプロファイルに相当)を、IEEE標準の「2050」にするために、著作権の移管などがあった。(IEEE 754(浮動小数点)とかIEEE 802(LAN)などと同様なワーキンググループのひとつ。他にどういうものがあるかは http://standards.ieee.org/develop/project/computer_technology.html で見られる)

この件に関する情報としては、

はあるが、日本語でちゃんとした内容を伝えるものは、なぜか(いつものことだが)出ていない。

今後何が変わるか(予想)

以下の内容は私の予想だが、そう大きくは外れないだろう。

結論としては、何も変わらない。

例えば ISO/IEC 14576 (STbus) は、元はTRONプロジェクトで開発されたTOXBUSであり、「TRONプロジェクト発の世界標準」のひとつだが、それで何が変わっただろう?

IEEE P2050のページ( http://standards.ieee.org/develop/project/2050.html )の右の「PAR」(Project Authorization Request)と書かれている所にあるPDFに、プロジェクトのスコープやミッションなどが書かれているが、要するに、今あるμT-Kernelの仕様書をレビューし、IEEE標準のひとつとする、ということだけしか書かれていない。つまり、μT-Kernel以外の、(μでない)T-Kernelをはじめとするその他のTRON全てについては、全く無関係な話でしかない。

また、最も強く懸念されることとして、以前の(1.0の頃の)ITRONの仕様書がそうであったように、1万円以上の価格で購入しない限り、仕様を見ることができなくなるかもしれない、という点があるが(実際に現状で「IEEE P2050 IEEE Draft Standard for Real-time Operating System (OS) for Small-scale Embedded Systems IEEE P2050/D2, October 2017」を入手するには、268ドルで購入する必要がある)、2017年のうちに移管されている(はずである)μT-Kernel2.0の仕様が、2018年4月現在、英日版とも、tron.org のウェブページから閲覧可能であることから(単に更新されてないだけにも見えるが)、もし、著作権の移管により見られなくなるものならば、現状がそれに違反していることになるので、恐らく問題ないものなのであろうと、強く推測される。

その他

坂村先生の風呂敷はいつものことだし、アンチが「Linuxという世界標準があるのに」とか意味のわかんないこと言うのもいつもの後継なんですが、なんで今回はこんなにバズってるのというか。読売新聞効果ですかね?

先生の威勢のいい談話が出るのは結構ですが、教育用キットT-Car(リンク先画像 http://ascii.jp/elem/000/001/089/1089654/img.html )とか出るんですかどうなんですか。