GentleTyphoonの市販製品が復活するらしいので、GentleTyphoonについて暑苦しく語る

エルミタージュ秋葉原とかインプレスPCウォッチとかのサイトで紹介があったら書こうと思ってたのですが、どうやら国内に実際に流通するのを待ってるのか、ニュースの掲載が来ないので、まぁなんかgdgdと書いてみようと思います。

いまのとこ、(まとめ系PCパーツ情報サイト等を除くと)発売元のXPGの他には日本電産公式ツイッターの、

このツイートのみが日本語での情報なのですが、日本電産Nidec)の傑作静音ファン GentleTyphoon が、PCパーツ市場に帰ってくるようです。

まず第一の注意です。こちらの、「PRO」が付かないのは別物www.xpg.comですので、あわててそちらを買ってしまわないよう、注意が必要です。

一般消費者向けの1基からの小売りもしている取扱店があったりする山洋電気と違い*1日本電産B2Bだけなので、日本の代理店では2008年頃からScytheが扱ったことがあったものの、akiba-pc.watch.impress.co.jpそれが終了して以降、一般自作erには入手が困難なレアアイテムとなっていました。

これは私の持っている GentleTyphoon で、オリオスペックから流通在庫を買ったものですが、箱によると DarksSide Computer Modding ( https://www.darksidemods.com/ ) からの輸入品のようです。2150RPMで、12cmファンとしては普通の(静音を特に狙ってはいない)回転数ですが、ケースファンとしてしばらく使ってみての感想としては、十分に静音だったと思います。

PCパーツ市場ではほとんど見掛けなくなってからしばらく経っていることもありますので、以下 GentleTyphoon についてあれこれ語ってみようと思います。

まずはその大きな前進角の付いた前進翼でしょう。正面からの写真は次のような感じになります。

似たような前進翼を採用しているNoctuaの NF-A12x25 や、少し先行して発売されている Thermaltake TOUGHFAN などは、高剛性素材によりファンとフレームの間隔をぎりぎりまで無くして高静圧性能・特性の向上を図っているようですが、GentleTyphoon はそれらとは異なるようです。しかし、騒音の点で静圧を上げての動作は不利なはずですから、静音ファンとしては魅力が大きく損なわれるものではないと私は思います。

一方でかつての静音ブームの際には、静音スパイラル(何かが静かになると、それまでその騒音にマスクされていた別の騒音が耳につく、という果てしない現象)の終着点として、ボールベアリング独特の騒音がある点がよく言われていました。これについてはボールベアリングの採用は以前と同様となっていて、今後も同様と思われます(小型高回転ファンでは流体ベアリングの採用もあるようですが、120mmファンでは)。しかし、当時ほどの静音ブームではないし、他に騒音源があれば気にならない点ではあります*2

PCケースファンのような様態の小型軸流ファンにおける前進翼の効果については、日本機械学会論文集に収録されている次の文献doi.orgが、著者の多くが日本電産となっているので、おそらく GentleTyphoon の開発時のものではないかと思われます。

なお、このようなタイプの120mmファンは、山洋電気からは出ていません。次の写真は参考として、山洋の92mmファンである San Ace 92 のGAタイプのものです。92mmにはこのような静音重視と思われる前進角の大きいものがあるのですが、San Ace 120 のGAタイプは翼の枚数が少なく、GVタイプは枚数は多いものの前進角は大きくなく、いずれにしても GentleTyphoon に似たタイプは無いようです(私の見落としの可能性はあります)。

その他、GentleTyphoon に関する細かいトピックを挙げてみます。まずファンモータの大きさですが、山洋のハイパワーモデルとほぼ同じか少し小さいくらいで、一般的な120mmファンと比べるとかなりでかい部類に入るでしょう。耐久性と、ハイパワー化が考慮されている設計ということかと思います。次の写真は山洋 San Ace 120 のGHタイプ(ディスコン)と並べてみたものです。

XPG VENTO PRO では異なっているかもしれないのですが、私の持っている個体では、次のように、リブ周りがちょっと特徴的で、いわゆる「リブ有り」ですが、ナットを横から入れたりできるようになっています。

吐き出し側の内周寄りには、次のように乱流を積極的に起こすためと思われる加工があります。おそらく前述のように大きめのモータですので、その後背部の負圧部分のためかと思われます。

高速版等について

10年ほど前に市場に現れた際には、引き続いて、「高速版」が発売されていました。

akiba-pc.watch.impress.co.jp
www.gdm.or.jp

こちらは「電力が大きいためペリフェラル4ピンコネクタのみ」等と書かれていたり、次に示すようなPWM版ではマザーボードのコネクタに接続すると焼損の可能性がある、と警告があった等、特殊機材の趣があったりしますが、

www.gdm.or.jp

2017年に発売された液冷モデルのグラフィックカードラジエータに付いていたりするなど(明示はされていませんが、特徴的なリングや、フレームの特徴などが見える範囲では全く同じですので、ほぼ間違いないでしょう)、

www.4gamer.net

実は結構使われているようであり、ときおり、ちょっとした不良など何らかの理由でジャンク扱いになったものが秋葉原に流れていたりもするようです。

以前と比べファンコントローラ等も充実していますから、92mmモデルや、5400RPMの最高回転数モデル(D1225C12BBZP)が出ることとかも期待してもいいのかな、とか思いますが、ともかく今、新発売されるモデルが売れないと後続は無いでしょうから、まずは買い支えないと、と思います。それでなくても、本格静音ファンというか、それ以前に光らないファンの新製品は貴重ですから。

*1:ただしそういったルートからの購入は、PCパーツとしての販売ではないため、リード線の端末処理とかはされてないので、3ピンあるいは4ピンのコネクタは自分で付ける必要があります。山洋のファンの場合、オウルテックからPCパーツとしての販売がありますが、モデルが限られています。

*2:これが気になる人であればNoctuaのほうに軍配が上がるのではないでしょうか。なお、自作PC界での流体ベアリングブームは、寿命などのイメージを含んでHDDのそれに引っ張られた感があるような気がするのですが、次の文献によれば doi.org HDDの流体軸受化は記録密度の向上により、ボールベアリングでは不可避な、転がりが原因の機械的振動が許容され得なくなったものとのことで、山洋や日本電産のファンのボールベアリングであればファンには十分な性能と寿命があるものといって良いでしょう。

機械翻訳等の性能が向上しつつある現在や近未来において、文法の学習が重要であろう、という理由について

機械翻訳には2種類ある

性能が向上するならば、可能ならばどんな手法でも取り込む、という分野であるので、実際には明確に区分するのは難しくハイブリッドであることが多いだろうが、基本原理として機械翻訳には以下の2通りがある。

この2つは、互いに得意・不得意があり、いずれも、利用者としては文法に強いほうが、いずれも活用できる。従来型の場合、その原理上、入力が文法に沿っている(grammatical)ほど、翻訳は正確になる。機械学習型はそれに比較して、対応できる柔軟度が高い反面、文法に強い利用者であれば気付くような間違いを起こしやすい。

コンピュータやネットワークによる翻訳の支援は機械翻訳だけではない

Time flies like an arrow. という文が、昔の機械翻訳には難題である文としてよく言われていた。こういった決まり文句のような文は、Googleなどでの検索により、翻訳するよりは直接に情報を得ることができる。従って、学習においてはそういった物事よりも、文法のような「直接に検索できない、抽象的な理屈といったようなもの」に重点を置いたほうが良い、と言えるだろう。

7000オーバーまできっちり回せ!

クルマ漫画あるいは車マンガ、というジャンルがある、と思う(両方とも漢字にするとちょっと重過ぎるし、カタカナにするとちょっと軽すぎる)。

ゲームがシリーズとして続いてるから近年の作品であると私のような年寄りは錯覚しがちだが、『頭文字D』に『湾岸ミッドナイト』のどちらも前世紀の作品つまり初出は四半世紀近く前であるし、それぞれの作品の性格の違いが、セガナムコという性格の違うゲームブランドと面白い対照になっている、という気もする(実際にそれぞれの初代作のプロデューサーがその作品を選んだ、という所がそれなのだろう)。

さて、私が初めて読んだクルマがたくさん出てくるマンガは、思い出してみるに、『デイトナに虹を見た』というちょっと変わった作品で、後年の『栄光なき天才たち』のようなドキュメンタリーっぽい(ただし、特定の人物に焦点を当てているわけではない)ものであった。タイトルからはわからないが、東洋工業マツダ)のロータリーエンジン開発を描いた作品である。「デイトナに」というのはその24時間レースのことを指しており、RX-7 でGTカテゴリに参戦し好成績を上げた所までというストーリーになっている。

その後、マツダロータリーは1991年にル・マンを制したわけだが、そのぴったり四半世紀前、1966年のル・マンが、先日公開の映画『フォードvsフェラーリ』のクライマックスである。

思うに、ホンダF1のいわゆる「第二期」の終結とも同じ頃であったマツダ787Bの優勝と撤退は、日本のモータースポーツファンが欧州での大レースに湧いたその頃のブームの終わりの一つだった、という感じがある。そして、近年トヨタが勝つまでは日本勢の勝利は無かったわけだが、1966年に始まるフォードの連勝もまた、アメリカ勢によるル・マン勝利は空前にして絶後であるという、ある種の特別なものだという印象がアメリカのレースシーンから見て、あるのかもしれない。

映画は、アストンマーティンを駆るシェルビーがル・マン勝利(史実では1959年)を回想している描写から始まる。ハリウッド映画のルールに沿って、主要な登場人物の紹介となる場面が続き、そのラスボスが、エンツォ・フェラーリその人であろう。ネタバレなので詳細は省くが、火とかハンマーとか競技規則といったモチーフがあまりにも作劇作法通りという感じで繰り返し使われるのは、もはやどうかという感じもある。音楽でいうならこれはカノンとかの時代まで先祖返りしているのではなかろうか。日本人が見る際に、事前知識が無いとわかりにくい人物は多分ひとりで、アイアコッカ氏だろう(他はだいたいわかりやすいか、作中で説明的描写がある)。どんな人物かはウィキペディアを見ればだいたい書いてあるが(wikipedia:リー・アイアコッカ*1)上司であったマクナマラ氏が主にベトナム戦争絡みで下げる評価が先行しがちであるのに対し、フォードでの(この映画で描かれた)成功と、その後のクライスラー再建の成功という背景を知っていると、いろいろ見えてくる映画中の描写があると感じた。

それはさておきストーリーのほうに戻ると、流石に半世紀前のモーターレース界隈は、私の世代がリアルタイムで見慣れたレーシングカーの世界ではない。エンジンの位置こそリヤ・ミッドシップにはなっているが、いわゆる「Cカー」と呼ばれたペッタンコなあのクルマの時代、2020年の今日、トップカテゴリ LMP-H としては終わろうとしているあのクルマの時代がまだ始まっていないのである。

レーサーの名前も、私が初めて接した時点で既に神話であった人ばかりである……が、一人、「マクラーレン」という名前が出てくる。本人は1970年に事故死してしまったものの、あの「帝国」と呼ばれることもある強豪コンストラクターの初代を*2創設し、自ら走ったのが、この映画にも登場するマクラーレンその人なのである。これも知らなければ「同じ名前だな」と思ってしまう所か。

WIRED誌の映画評(和訳で読んだだけだが)では、良い映画だけども、技術ドキュメンタリーではないとか、モータースポーツを描いていないという評で、いずれも間違ってはいないが、無いものねだりというか、それはこの映画に必要なものではない、という気がした(技術に関してはチューリングの映画に、コンピュータ科学の専門家が持った感想と似たような所はあるだろう)。バトルそのものとしては全く違うわけだが、赤いカラーリングの車と青いカラーリングの車が、あの直線で競うという場面は『ミシェル・ヴァイヨン』(2003、モータースポーツ映画としてはストーリーが荒唐無稽、という評がある)を思い出したが、それでいいのではないだろうか。チャンスを待って待って待って……そしてパスする、というリアルなモータースポーツを見たいならば実際のレースの動画を今はいくらでも見られるのだから。

たぶん、タイトルの「フォード」も「フェラーリ」もダブルミーニングであって、どちらも、チームや車のことを指していると同時に、それぞれの総帥を指してもいるのだろう。レースが終わった後、マイルズがメインスタンドの上のVIP室を見上げるとそこには……というシーケンスに、私は深い意味があると感じたが、どうだろうか。

*1:2019年に逝去されていた、というのは今これを書いていて知った。

*2:マクラーレンチームの歴史はややこしいのでここでは仮にそう表現する

(専門教育として)プログラミングよりもコンピュータ科学をやれ、というなら、まずプログラミングをやるべき理由

典拠

ACMが示している、コンピュータ科学の専門教育のカリキュラムガイドライン Curriculum Guidelines for Undergraduate Programs in Computer Science の2013年版(CS2013, https://www.acm.org/education/curricula-recommendations#h-computer-science )で例示されている時間の割り振りと内容を見るとそうなっている。

詳しく

CS2013 では、次のように基本的な内容を Tier-1、発展的な内容を Tier-2 として時間の割り振りの例を示しているが(p. 37)、

まず Software Development Fundamentals(SDF)に、次いで Discrete Structures(DS)に、多大な時間を割り振っていることがわかる。そして、それぞれの説明には次のようにある。

SDF

(p. 167) Fluency in the process of software development is a prerequisite to the study of most of computer science. In order to use computers to solve problems effectively, students must be competent at reading and writing programs in multiple programming languages. Beyond programming skills, however, they must be able to design and analyze algorithms, select appropriate paradigms, and utilize modern development and testing tools. ...

コンピュータ科学で何をやるにもほぼプログラミングは大前提であり、複数のプログラミング言語を読み、書けなければならない、といったようにある通り、プログラミング抜きにはコンピュータ科学はありえない、という考えかたが背後にあることがよくわかると思う。またそれに続けて、アルゴリズムの設計や分析、といったように書かれているように、プログラミングとは単にコードを書くことではなく、アルゴリズムなどについても当然含まれる、といった考えかたであることもわかる。

DS

(p. 76) Discrete structures are foundational material for computer science. By foundational we mean that relatively few computer scientists will be working primarily on discrete structures, but that many other areas of computer science require the ability to work with concepts from discrete structures. Discrete structures include important material from such areas as set theory, logic, graph theory, and probability theory.

The material in discrete structures is pervasive in the areas of data structures and algorithms but appears elsewhere in computer science as well. For example, an ability to create and understand a proof—either a formal symbolic proof or a less formal but still mathematically rigorous argument—is important in virtually every area of computer science, including (to name just a few) formal specification, verification, databases, and cryptography. Graph theory concepts are used in networks, operating systems, and compilers. Set theory concepts are used in software engineering and in databases. Probability theory is used in intelligent systems, networking, and a number of computing applications.

「離散構造」などと訳されることもあり、また数学の分野としては離散数学などと呼ばれることもあるが、そのあたりの分野である。大学などでは、これらの授業で習った内容について、すぐに(忘れないうちに)応用したプログラムを提出させている所などもあると思うが、プログラミングと密接している最重要分野といってよい。

ssh-agent に、サブコマンドを指示する引数を付けた場合の挙動について

ssh-agent には次のようにして、サブコマンドを指示する引数を付ける起動法があります。

ssh-agent cmd

たとえば ssh-agent bash のようにして、エージェント配下の環境を引き継ぐために使うものですが、man ssh-agent を読むと、その際の挙動について、次のようにあります。

If a command line is given, this is executed as a subprocess of the
agent.  When the command dies, so does the agent.

そのまま素直に読めば ssh-agent が親プロセスとなり、子プロセスの側で引数として名前を与えたものを exec する、という意味に読めます*1……が、実際にやってみると、逆であることがわかります。

以下は私の手元の FreeBSD で、試してみた一例ですが(ps コマンドの結果から見つけやすくするため、起動するコマンドは csh にしています)、

$ exec ssh-agent csh
% ps axd
  PID TT  STAT       TIME COMMAND
    0  -  DLs     4:16.86 [kernel]
    1  -  ILs     0:00.08 - /sbin/init --
  121  -  Is      0:00.01 |-- adjkerntz -i
(略)
73430 v0  R       0:00.63 |-- mlterm
73431 15  Ss      0:00.08 | `-- csh
73445  -  Ss      0:00.00 |   |-- ssh-agent csh
73910 15  R+      0:00.01 |   |-- ps axd
73911 15  S+      0:00.01 |   `-- less

というように、親プロセスのほうが引数として与えたほうを exec していて、ssh-agent は子プロセスの側に、つまり、それ以降にこのシェルから実行されるプロセスから見ると、きょうだいプロセスの位置にあります。

実装の変更にドキュメントが追随していないだけか、とも思ったのですが、どうも最初からのようです。

もうちょっと調査したら、OpenSSH プロジェクトに報告するつもりで……いたのですが、だいぶ放置してしまっています。どこにもアウトプットしてなかったので、ここに置いておきます。

*1:記憶にある限り、既存の解説書などの図でも、全てそのようになっています。

技術書典7にサークル参加します

配置は「え19C」です。新刊は、技術系よろず(?)同人誌「ElectroComplex」3号(¥300)です。内容は今までと同じく記事1本で、サークル詳細から引用しますが「ネットにはいまいちスッキリとした解説の見つからない、バックアップにおけるハノイの塔手法(Tower of Hanoi backup rotation scheme)について、筆者による独自研究の粋を尽くした解説をお送りします」という記事となります。

既刊まとめ買いのディスカウント価格は検討中です。また、在庫状況は全く読めていません……