タッチパッド機におけるブラウザのJavaScriptの、エミュレートされたマウスイベントと、インタラクティブなコンテンツとの干渉について
サンプルを https://github.com/metanest/mobileBrowserMouseEmulationInteraction に置いてあります。
仕様としては、W3Cによるタッチイベントの仕様 https://www.w3.org/TR/touch-events/#mouse-events に含まれているのですが、タッチパネル操作のスマートフォンやタブレットのウェブブラウザのJavaScript では、タッチ操作のイベントの後に、(既存アプリ用の)マウス関係のエミュレートされたイベントを発生させることが、仕様で考慮されており、多くの実装がそのような挙動をします。
仕様中に、
If the contents of the document have changed during processing of the touch events, then the user agent may dispatch the mouse events to a different target than the touch events.
とあるように、先に発生したタッチイベントでコンテンツを書き換えた場合などは、同じ場所で後から発生する(マウス)イベントは、同じ場所に新しくできた違う対象に対して発行されるかもしれない、ということになっています。
これは実際のところ、厄介な挙動になり得ます。サンプルは、あるエリアをクリックするとオーバーレイが表示され、そのオーバーレイをクリックするとオーバーレイが消える、というものですが、スマートフォンのブラウザに表示させて試してみると、オーバレイがすぐ消えてしまうような挙動をする(場合が多い)はずです。実際にどんなイベントが起きているかは JavaScript コンソールに出力しているので、そちらで確認できます。
なお、仕様では、
If the preventDefault method of touchstart or touchmove is called, the user agent should not dispatch any mouse event that would be a consequential result of the the prevented touch event.
となっているので、(あるべしとされている通り実装されていれば)それに従うことで抑止できるはずです。
特に、各種のフレームワークの内部でこれが起きている場合、把握するのはなかなかに厄介です。
例えば、こちら( https://github.com/callemall/material-ui-webpack-example/tree/master/src/app )にある(2018年2月末現在)Material-UI のサンプルでは、react-tap-event-plugin というプラグインを利用して onTouchTap というハンドラで処理をしています。そしてこのサンプルを、onTouchTap の利用をやめ onClick のみに変更されている、バージョン 0.19.0 及び、それよりも後の Material-UI で動かすと、開いたダイヤログの背景の onClick が呼ばれて、ダイヤログがすぐに消えてしまう、という現象が起きます。*1