「Unix」と「UNIX」

一般に、登録されている商標のソレがUNIX(R)であることから、認定・ライセンスのもとにあるものを特に「UNIX」、同様のAPI(いわゆるPOSIX)を実装したものを総称するのは「Unix」のように使い分けられており((追記) ただし英文字の文字商標は効力としては大文字小文字関係なく通用するものであるようです)、一般的な理解としてはそれで普通は問題無いが、実はもっと深いエピソードがあるのだ、という話。
ジャーゴンファイルの「Unix」の項( http://catb.org/jargon/html/U/Unix.html )の最後の部分にあるように、デニス・リッチーさんら「ベル研の中の人」たちは、(ある頃以降は)英語における一般的な表記ルールの通り、頭字語(イニシャリズムand/orアクロニム)ではない固有名詞として「Unix」と綴るべき、と認識しているのだが、論文「The UNIX Time-Sharing System」(BSTJ版は http://dx.doi.org/10.1002/j.1538-7305.1978.tb02136.x http://cm.bell-labs.com/who/dmr/cacm.html )が起源で「UNIX」がよく使われるようになっているうちに「AT&Tの中の人」による商標の登録までそうなってしまったのだ、とか((初期の)Unixを代表する論文として一通だけ挙げる場合はまず間違いなくこの論文が選ばれる、という論文である)。
具体的にデニス・リッチーさんからメッセージをもらっている人が掲載しているのでそれも見てみると詳しいのだが(ダグ・マキロイさんも同様だという http://www.unixica.com/html/unixunix.html )、ざっとまとめると、当時彼らが使っていた印刷システムで小書き大文字(small caps)が出力できるので調子に乗ってその機能を使って(小文字の代わりに小書き大文字を出力して)いた、というのである。実際、「The UNIX Time-Sharing System」のtroffソース( v6doc という名前で配布されているアーカイブの中に入っている)を見てみると、

.if e .tl '\fIU\*sNIX\*n Time-Sharing System - %\fP'''
.if o .tl '''\fIU\*sNIX\*n Time-Sharing System - %\fP'

のように「UNIX」のように出力されることを意図していることがわかる。いくつかバージョンがあるので書かれた時期はあまり絞れないが、だいたい1975年としてケン・トンプソンさん32歳、デニス・リッチーさん34歳の頃である。