わかりやすい「英雄」や、わかりやすい「悪役」を求める人たち

ウィキペディアの「嶋正利」に

なおビジコンは嶋による4004に代表されるようにコンピュータ史上特記すべき開発を次々と行っているが、官僚ならびに財閥の圧力によりダイオードの供給をストップされて電卓の発売ができなくなり最終的に倒産するなどの憂き目にあっている。

という記述があったので、削った(編集履歴http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%B6%8B%E6%AD%A3%E5%88%A9&diff=34011470&oldid=33605306
それに対応して、「ビジコン」のほうに、文献にもとづいた記述を追加しといたんだけど(編集履歴http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%93%E3%82%B8%E3%82%B3%E3%83%B3&diff=34035868&oldid=33475040
どうも、ビジコンは三菱や通産の役人がぶっつぶしたんだ、というわかりやすい悪役の登場する神話を求めている人がいるようだ バカか?
しかし、たらればの話になるが、もしビジコンが「マイクロプロセッサ」の特許を取っていて、それのライセンス収入ががっぽがっぽあったら、ドル・ショックももちこたえていたかもしれない、ということはあるかもしれない。とすると、『電子立国』の単行本によれば、ビジコンによる「特許を取れないか」という相談に対し「取れませんよ」と返事したという三菱の知財担当者のせい、と言えなくもない
ビジコンが特許を取らなかったことを「なんで取らなかったんだ」という人もいるわけだが、この三菱の知財担当者は多分ガンガン IC 化を進めていた当時のコンピュータの最先端を知っていた人なんじゃなかろうかと思うわけで、そういう人には、4 ビットのコンピュータ(当時のメインフレームはすでに 32 ビットだったことは忘れられがちである)をチップに詰め込むなんてのは、やろうと思えば誰でもやれること、という意識があったのかもしれない(『電子立国』の単行本のほうには詳しい話が載っているが、シャープと日電によってもほとんど同時期に 2 チップ構成のマイクロプロセッサが作られている)
しかし、これはたらればの話である。たとえば「茶谷シャッター」で知られるところであるが、訴訟体力のない小企業などの特許を、大企業はちょっとした小細工で回避し、ライセンス料の支払いを拒む、という話もまたよくあるところではある。なぜかあまり知られてないが
そんなわけで、結局たらればの話はたらればに過ぎず、えてして事実に基づかない神話というものは、一方的な都合のよい展開を切り貼りしたものになりがちというか