大沢無線

ふと検索したところ、「官僚たちの夏」の大沢無線のモデルが富士通ではないかという意見があるようだが(撮影に FACOM 128B が使われたことを理由に)、富士通は(1960年頃からは通産省の支援もあったとは言え)計算機の開発にはすすんで取り組んだメーカーのひとつだったわけで(「計算機屋かく戦えり」の塩川新助さんや池田敏雄さんの章を参照)、作中の従来路線にこだわる「大沢無線」を富士通ととらえるのはあきらかにちょっとどうかと思われる
また参考までに、大沢無線がトランジスタによるテレビを云々というくだりがあるが、トランジスタによるテレビの実現に果敢に挑戦したのはソニーである。もちろんソニーソニーで、言われるまでもなく新分野を開拓していった企業であるからして、モデルとは言えないだろう
また、コンピュータへの業種転換についてであるが、史実を参考にすれば、コンピュータはテレビ以上に生き残りが熾烈になった分野で(IBMの存在もあるし)、いかにも中企業然とした大沢無線にコンピュータをやらせるのは無茶すぎる(現代からの視点だが)。「天才」池田のいる富士通や、広大な中央研究所を抱え「野武士」と評される日立(情報処理学会の規定で「中研」といえば日立中央研究所を指すくらいである)と伍して、蒲田の大沢無線がやっていけるとは思えない。史実ではコンピュータへの参入規制もきつかったわけで、また松下のコンピュータからの撤退を英断とする評価もある(ふと思ったが周辺機器分野なら可能性はあるか?)
ソフトウェア産業を勧めるのならわからないでもないが、それはさすがに1960年にあったらおかしいし
ウィキペディアの記事を見たところでは、原作では平松守彦さんをモデルにした人物は出てこないようで、コンピュータについてはそんなに期待できないんじゃないかと。この先の話でコンピュータが主となる話が出てくるらしいという話もあるらしいが
平松守彦さんについて、「ザ・レイバー・インダストリー」に、と書こうと思ったら既に書いてるひとがいたのでリンク→ id:chikuma_jp:20090325:p1