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「NASAがワープ宇宙船」の件

報じているのが cnn.co.jp なのでわりと広まってる感じがするのですが、ざっと検索したりしてわかった範囲のことをまとめてみます。

これはそんなにガチで検討されたイラストではありません。と言っても、職務の一部としてぐらいでガチで研究してる研究者が、ガチで科学監修をして出来上がったイラスト、ぐらいの感じではあります。ネタ元はトレッキーの皆様なら先刻お気付きでしょうが(元々は作品原案段階でのエンタープライズ号の形態案のひとつだったものが、後続作中で未来史の中に組込まれた)「XCV-330」エンタープライズ号です。同じイラストレーターによるモデリングレンダリングによるイラストのあるページへのリンクを示します。

このコンセプトとイメージを叩き台に、前述のような科学監修により、大幅にリファインしたものがこの「ワープ実現の宇宙船」ということになります。日本語の記事ではTechnityの記事が、CNNより詳しいところもあるでしょうか。

英語の記事では、io9が最初に報じたようで、Sploid(Gizmodo本家)の記事がかなり詳しいです。Giz日本は訳してくれるかな...

さて以下、背景知識とかの説明ですが、まずこの件の「ワープ」は、「アルクビエレ・ドライブ」を基としたものです(wikipedia:アルクビエレ・ドライブ)。ウィキペディアのワープの記事から分離させた時はどれだけ現実的なのかいな、と思っていたのですが、NASAの中の人が職務の一部で研究するぐらいにはマジだったのね、と少々驚いています(汗)。まぁNASAといえば、赤外線ハラマキから(←冗談)、主翼が斜めに付いている飛行機(wikipedia:en:NASA_AD-1)まで研究している所ですけども。
で、「NASAの研究者」は、Harold G. Whiteさんです。ざっとした紹介は英語版Wikipediaを参照してください(wikipedia:en:Harold_G._White_(NASA))。NASAのジョンソン宇宙センターで、先進的推進システム(惑星間ないしその外のためのイオンロケットやプラズマロケットとか、そういったものが主)に関する研究をされているようです。本気でワープをNASAが研究しているのか? という件については、文献からの引用を基に判断しているSkeptics StackexchangeのこのQA(Is NASA working on warp drive?)が参考になるでしょう。比較的現実的(?)な研究としては、Quantum vacuum plasma thruster(量子真空プラズマスラスター? なんか、シャープ_PRさんが飛びついてきそうな名前ですが)という提案とかもあるようですが(wikipedia:en:Quantum_vacuum_plasma_thruster)、アルクビエレ・ドライブについては現実的なエネルギーで可能かもしれない、という提案をしていたり(←よくわかっていません)、ミクロの世界での検証(wikipedia:en:White–Juday_warp-field_interferometer)などをされているようです。
今回の報道のネタ元の大部分は、昨年11月7~10日の「SpaceVision2013」というカンファレンスの「Faster than Light - Warp Drive」というセッションの講演で、講演のプログラム・録画・プレゼン資料配布のURLを示します。

さて、そろそろ「NASAのワープ宇宙船」の話に戻りますが(長かった)、NASAで行われている研究のひとつではありますが、以上のように1研究者がイメージイラストとして提示したもので、NASAとして公式に広報したりしたものではありません。
イラストを描いたのは、2008年と、2010年からは毎年、スタートレックの月替わりカレンダー「Star Trek: Ships of the Line」にイラストが描かれているMark Rademakerさんで( http://en.memory-alpha.org/wiki/Mark_Rademaker )、イラストを描いたいきさつについてはブログ記事を書かれています( http://mark-rademaker.blogspot.jp/2013/06/ixs-enterprise.html )。
スタトレ世界の架空艦(?)としては、IXS-110 エンタープライズという名前が付いており( http://memory-beta.wikia.com/wiki/IXS_Enterprise )、今年のカレンダー「Ships of the Line 2014」の10月にも使われている、とのことですから、トレッキーの間ではそこそこ前から周知だったのでしょうか? ところでこの価格はプレミア価格?

Star Trek 2014 Wall Calendar: Ships of the Line

Star Trek 2014 Wall Calendar: Ships of the Line

IXS-110 エンタープライズは、講演の録画を見ると40分のあたりで説明していますが、XCV-330を叩き台としたのは、リングがワープのための泡(バブル)を生成するとするとそれっぽい、という理由のようです。それに、リングが薄すぎるのでもっと太くしたり(推進剤タンクと推進部を大きくしたり、もか?)という科学考証と、Michael Okudaさんからの助言(input)なども入れて、それっぽく・また見慣れているスタトレっぽくしたのが、(「NASAのワープ宇宙船」ではなく)IXSエンタープライズというわけでした。というわけでスタトレっぽい、のではなく、スタトレっぽくしたもの、です。長かった(疲れた)。
ところで、XCV-330ですが、私は真っ先に連想したのが、石原博士の設定を基に宮武一貴さんが描かれた「オレーム2世」号でした。XCV-330のリング型の外側船体は、危険なワープ機関をキャビンから離しているという設定らしいので、大型の機関がリングに付いているように見えるオレーム2世のほうが、むしろそれっぽいようにも思えます。
さらに、アルクビエレ・ドライブは空間を歪める、というアイディアのようですが、どうも雰囲気が石原博士の「光速伸長航法」に似ているような気がしてなりません。石原=アルクビエレ・ドライブと呼びたい……とまで言っては贔屓が過ぎる、でしょうか?